アイドルになれないなら死にたい

私は死んだ。

暖かい木漏れ日の中、私はとっても幸せを感じていた。
なんて愛おしい日なのだろう。なんて私は幸せなんだろう。

私は単純だ。幸か不幸かも、天候に左右されてしまっている。

幸せだ。家に帰ってしまうのなんてもったいないじゃないか。
そうだ、今日はこっちの小径に入ってちょっと散歩でもしよう。

と小径に目をやったその瞬間に高校生カップルが目に入る。手をつないでいる。
擬音語をつけるなら、まさに「キャッキャッ」
ビルとビルの間から差す西陽が、まるで光背のように光り輝く。

その瞬間、私は死んだ。おおいに死んだ。派手に死んだ。
このコンプレックスの一つでもある小さい口元からは大量の血を吐き出し、
身体はガクガクと震え、私は意識を失った。
私は死んだ。

ーーーーー

ビールを買いに西友に行く道を歩いていた。
夜風が気持ちいい。温かい空気と冷たい空気が折り重なって、独特の匂いがする。
ああ幸せだ。ただ少し寂しい。こういう空気はなんで人を切なくさせるのか。
こんな日のこの瞬間がたまらなく好きだ。一人ぶらぶらしてる私は何にも縛られてやしない。
私は自由だと感じる。幸せだ。

愛しの音楽に耳を傾けながら、新しくできたフォーの店に目をやる。いつかふらっと立ち寄ろうとしていた店だ。
目をやった、その瞬間に、男がレンゲを女の口に持って行っている。
擬音語をつけるなら、それは「あーん」だ。
折り重なっていたはずの空気がキンと冷たい空気に変わる。

その瞬間、私は死んだ。このタイミングの悪さ。なんて私は不幸なんだろう。
もう嫌だ。こんな世界糞くらえと思った瞬間、まさしく反吐が出そうなくらいの吐血をする。
おかしい、なにかがおかしい。身体全体がかゆくなり、熱を帯び、そして私は死んだ。
多くの血を吐いたことによる、所謂ショック死だ。
私は死んだ。

ーーーーー

多くの友人と会い、 様々な勉強をさせていただいた。
人々との出会いはいつだって私を成長させる。私はもっと色々知りたい。
嗚呼、今夜は感慨深い。帰ったらネタ帳に今日のことをいろいろ書かなければ。
夜、それは無限に思えるが、有限。まだ刺すように冷たい空気。
私は家路を急ぐ。この感覚を早く書き留めなければ。忘れないうちに、早く。
夜の空気は張りつめている。でもどこか余裕を持たせているかのように夏の匂いがする。
私はずるいと思う。この空気。

線路を渡るとカップルがいた。
「こうやってね、こういうのをやりたかったんだー」と、女がほざく。
そうして、女は男に駆け寄り、そしてぎゅっと抱き締めるそぶりをする。
男は笑いながらも、それを受け入れる。
「なんだよーそれー」
口では小馬鹿にしながらも、女のあるがままに抱きしめられている。

その瞬間、私は死んだ。今まで以上に、派手に、そりゃもうド派手に、死んだ。
心臓から送られる血液が傷口から次々に溢れ出す。
私もさすがにその時は事前に死を悟った。ああ、これが死というやつか、と。

私はとことん不幸だ。幸せでもあるけれど、不幸だ。

私は何回も死んだ。地味に死んで、派手に死んで。
私は何回も生まれ変わった。地味に死んで、派手に死んで、生まれ変わっている。

生まれ変わっているはずなのに、ずっとひねくれたままだ。
死んでも変わらない。生まれ変わっても変わらない。
私はずっと死んでいくのだ。生まれ変わっても、変われずに死んで行くのだ。

死んで行くのだ。
ハローハロー新しくもない私。

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